システム監査基準 (平成 30 年) における“十分かつ適切な監査証拠”を説明したものはどれか。

  1. 証拠としての質的十分性を備え、証拠の保管要件に適合し、かつ、偽造されていないことが確認された証拠
  2. 証拠としての質的十分性を備え、法令及び組織の内部規則に適合し、かつ、適切な方法によって入手された証拠
  3. 証拠としての量的十分性を備え、システム管理基準に適合し、かつ、情報システムから出力された証拠
  4. 証拠としての量的十分性を備え、確かめるべき事項に適合し、かつ、証明力を備えた証拠

出典:令和5年度 システム監査技術者試験 午前2 問7




正解:エ
監査証拠とは?
監査証拠とは、システム監査の結論を導くために必要な情報です。
この監査証拠は「十分かつ適切」でなければなりません。

「十分かつ適切な監査証拠」を得るために、以下の3つの要素が求められます。

■量的十分性(Sufficiency)
監査の目的を達成するのに十分な量の証拠があること。
1つの証拠だけでは不十分な場合もあるため、多角的に証拠を収集する必要がある。
例えば、「アクセスログ」「業務記録」「インタビュー結果」などを組み合わせて、適切な監査結論を導く。

■適切性(Appropriateness)
証拠が監査の目的に適合していること。
信頼できる情報源から得た証拠であること(例:正式な文書やログ、直接観察した情報など)。
適切でない証拠(噂話や曖昧な証言など)は監査証拠として不適格。

■証明力(Competency)
証拠が確かめるべき事項に適合し、監査の結論を正しく裏付けられる力を持つこと。
例えば、「不正アクセスがないことを証明する証拠」として、適切なアクセスログがあれば証明力が高いが、口頭証言だけでは証明力が弱い。

各選択肢の検討
ア:「証拠としての質的十分性を備え、証拠の保管要件に適合し、かつ、偽造されていないことが確認された証拠。」 → ❌ 誤り
「質的十分性」は重要だが、「量的十分性」に言及していないため不十分。
「保管要件に適合」「偽造されていない」は大切だが、それだけでは監査証拠の適切性を完全には保証できない。

イ:「証拠としての質的十分性を備え、法令及び組織の内部規則に適合し、かつ、適切な方法によって入手された証拠。」 → ❌ 誤り
「法令及び組織の内部規則に適合」「適切な方法で入手」は重要だが、「量的十分性」に言及していないため不適切。

ウ:「証拠としての量的十分性を備え、システム管理基準に適合し、かつ、情報システムから出力された証拠。」 → ❌ 誤り
「量的十分性」に言及しているが、「適切性」や「証明力」についての記述がない。
「情報システムから出力された」ことだけでは、その証拠が正しく、適切なものであるとは限らない。

エ:「証拠としての量的十分性を備え、確かめるべき事項に適合し、かつ、証明力を備えた証拠。」→ ✅ 正しい
「量的十分性」「適切性」「証明力」の3つを満たしているため、システム監査基準の要件に合致する。
監査の結論を導くために、十分な証拠があり、それが適切であり、証明力を持っていることが重要。

まとめ
監査証拠は「十分かつ適切」である必要がある。
**「量的十分性」「適切性」「証明力」**の3つを満たしている必要がある。
選択肢4が正解なのは、この3要素を満たしているから。